リビングダイニングのカーテンのお取替えで、生地サンプルを持参して採寸に伺いました。
ご自宅はウォールナットの床にアンティーク家具、木製カーテンレール…と高級感あるクラシックスタイルです。
お客様のご希望は『イチゴドロボウ』で、イギリスMORRIS&Co.のベスト版収録のコットンプリント5色からの選択となりました。
庭園から貴重なイチゴを盗むいたずらなツグミがとても可愛らしいデザインです。
カーテンと壁面、どちらでも美しい見せ方が出来たのは『ネット構造』というひし形上のデザイン配置がポイントになっています。
オリジナルはマートン・アビー工房において最初に作られた多色使いの『インディゴ抜染プリント生地』です。
インディゴプリントとは、日本では『藍染』で馴染み深い技法ですが、当時のイギリスではほとんど開発されていませんでした。
モリスは、インドで藍や茜による染色を研究していた人物と共に、天然染料を使った染色方法を確立しました。
モリスのデザインを生み出すうえでも欠かせないのが『抜染』です。
- 生地全体を染色液に浸し美しい藍色に染めます
- 絵柄部分に木版で溶剤を付け(ブロックプリント)絵柄部分を脱色します
この工程から生み出される色の濃淡はモリスのデザイン表現そのものでした。
イチゴドロボウには3つの工程があります。
- 生地全体を染色液に浸し美しい藍色に染めます
- 工房のそばを流れるワンドル川ですすぎます
- 木版は、赤、黄色の順で押します。オリジナル生地には美しいグリーンがありますが生地の藍色と黄色が混じり合った色です。
モリスがインディゴ抜染プリントを多用しているのは、伝統的な技法を復活させたいという想いがあったからです。
天然染料が表現する色、時間とともに馴染んでいく色合いは、豊かで深みのある生き生きとした美しさがあります。
手仕事への回帰やものを大事に使うという信念がモリスのこだわりだったのでしょう。
現代の私たちは、新しい物を取り入れ古いものを捨てていきます。
『イチゴドロボウ』の日常を切り取った可愛らしいストリーを感じさせるデザインは、季節の移ろいを感じ、自然を慈しみ、ノスタルジーに浸ることで自然の美しさに目を向けたくなります。それが150年以上の時を超え世界中で愛された理由かもしれません。
持参した5色の生地サンプルを順に窓にあててみると、STRAWBERRYTHIEF 226713 SLATE/VELLIM がお客様のイメージに合っていました。
どの生地が良いか?悩んだ時は、その場所で大きなサンプルを見ると一目瞭然です。
イチゴドロボウの本質『インディゴ抜染プリント生地』を再現するイギリスMORRIS&Co.のファブリックで、お客様は大満足でした。
この記事へのコメントはありません。